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雲母(KIRA)の舟に乗って

東京と京都の街角でキラッと光る揺らぎの瞬間を拾った写真&エッセイのブログです♪


by 雲母舟

人間的なアルファベット

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9月に入り、朝夕は涼しくなってきた。
読書にはいい季節の到来だ。
私の周囲には読書好きの諸先輩が何人もいて、時々、面白い本をくださることが多い。
頂いた本を今日ひもといてみたのが、丸谷才一の「人間的なアルファベット」という講談社から出ている単行本だった。
“ACTRESS”から“ZIPPER”まで、エロスとユーモアに溢れたアルファベット26文字の面白い辞書仕立てのエッセイとなっている。
まず最初のAはみなさん“AFFAIRS”を期待するところだろう。
でも、さにあらん、先頭バッターは“ACTRESS”(女優、女役者)。




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なんでも女役者というのは、江戸時代からあったらしい。
例の江島生島事件以来、芝居好きの殿様が女ばかりの一座を組織させた。
女役者たちは、将軍家や大名のお屋敷へ芝居を演じに出向いたそうだ。

女優というと、最近は事件を起こした俳優の母である女優の高畑淳子が話題になった。
あれは母親の育て方が悪かったと非難の声も聞かれた。
でも、子を持つ母親の全ては、彼女を大声で非難など出来ないのだ。
いついかなる理由で自分の子が何か仕出かすかわからないから。

「高畑さん、ほんと可哀想」と、テレビニュースを見ていた高校生の娘が金髪の頭を振り振り言った。
「よく言うわ」と心の声で私。
言いたいことはゴマンとある。
テレビ画面で泣く女優は可哀想で、目の前の母親は可哀想じゃないってのかしらん。
そんな母の気持ちも気づかず、「ねえ、『手紙』って映画が観たことある?すごくいいよ」と不良娘が言った。

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私は好奇心に駆られ、ジムの帰りにTSUTAYAへ寄って、2006年秋に公開された生野慈朗監督の『手紙』を借りた。
原作は東野圭吾のロングセラー小説。
弟の学費を手に入れるため強盗に入った家で人を殺してしまう兄。
その兄のせいで人生を狂わされ、夢を次々と奪われる主人公の弟。
殺人犯とその肉親の罪と罰とは?
最後まで涙、涙の連続だった。

夜になって、引き続き丸谷先生の本を読む。
Qの項目は、“QUOTATION"(引用)。
民俗学者の折口信夫が石川啄木の「おどけ歌」を引用して
「君が目は、万年筆のしかけかや。やまず涙の ながるる ながるる」
さきほどまで滂沱の涙だった私はいたく感じ入ったのだが、丸谷先生はこれを同性愛の歌という。
驚いて、折口信夫を調べると、果たして男性しか愛することができない男性だった。
今まで全く知らず、なんたる不覚。
よくよく年表をみれば、奇しくも今日9月3日が命日だった。
折口信夫自身はとうの昔に行き着いていたが、私は“ZIPPER”に行く前に合掌した。

人間的なアルファベット

映画『手紙』

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by kirafune | 2016-09-03 23:52 | きらきら | Trackback | Comments(0)