
写真は現実世界の本歌取りなり。

渋谷の松濤美術館で面白い展覧会を開催していた。

「杉本博司 本歌取り 東下り」
本歌取りとは・・・
和歌の作成技法のひとつで、
有名な本歌の一部を意識的に自作に取り入れたうえで
新たにオリジナリティを加えて歌を作る手法のこと。

初めは西の姫路で始まった展覧会は、今回、東の東京で新たな展開を迎えたことから、

「本歌取り 東下り」と題された。
松濤美術館の地下1階が第一会場になっていた。
早速、入ってみよう。

吹き抜けの自然光が入る地下の展示室で杉本の《甘橘山春日社遠望図屏風》が明るい光を放っていた。

葛飾北斎《冨嶽三十六景 凱風快晴》を本歌とした、杉本博司の《富士山図屏風》。
《凱風快晴》が描かれたと推定されている山梨の三つ峠に登り、北斎の富士を再現した。

《春日大社藤棚図屏風 》は藤棚から花の香りが匂いたつようだった。

藤の季節に春日大社に行ったことがあるけれど、

杉本の砂ずりの藤は本歌を超えて、春日さんの神霊が藤棚に降臨しているように感じた。

建築家・白井晟一が設計したこの松濤美術館で本歌取りの展覧会を開催する杉本博司は
もしかすると、この建物自体を本歌にして、自身の作品を本歌取りと捉えているのかも知れない。
優美な階段を2階まで上がり、

第2会場へ。
》
《Brush Impression いろは歌》
新作の「Brush Impression」シリーズは、「書」と「写真」の融合作品だった。 写真暗室の中で、印画紙の上に現像液や定着液に浸した筆を用いて文字を書いたという。

《宙景001》の前にはギベオン隕石(1838年発見、小田原文化財団蔵)がそっと置いてあった。

「月」「水」「火」の銀塩写真がキラキラ輝いていた。

杉本博司が尊敬してやまない建築家・白井晟一が晩年に手がけた桂花の舎(旧千博文邸)の模型が展示されていた。
この建物は杉本さん設計の「江之浦測候所」の近くに移築されることになっている。
2年後の公開が楽しみだ。

可愛い!と瞬間的に思った「叫ぶ女」は縄文時代中期の土偶だ。
つまり、我々は今から4、5千年前に作られた女と対面しているのだった。

《
相模湾、江之浦》は杉本自身の作品《海景》を本歌としている。
この作品は自宅の床の間に掛けたいと心底思った。
古代人の見ていたであろう風景を現代の私たちも杉本によって見ることができたのかも知れない。
原初の海は幾千万の時を経ても、なお変わることなく、ただそこにあった。

杉本博司の本歌取りは、本歌に勝るとも劣らない感動を観る者に与えてくれた。

雲母舟の本歌取りは今朝の高ボッチ高原からの富士山です。
2023年9月16日(土)~2023年11月12日(日)
東京都渋谷区松濤2-14-14 松濤美術館
電話:03-3465-9421
開館:10:00〜18:00(毎週金曜日のみ~20:00)※入館は閉館30分前まで
休み:月曜日
料金:1,000円
交通:井の頭線「神泉」駅から徒歩10分・JR「渋谷」駅から徒歩15分
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