看板の出ていない名店 ～くろぎ～

秋のかき氷は身に沁みる。

芝公園から大門に行く途中に、看板の出ていない、いつも気になるお店があった。

女も度胸だ。

店の前に立っていたお兄さんに声をかけ、後日予約して行ってみた。

日本料理の「くろぎ」は予約のなかなかとれない東京割烹の名店として名高い。

この日は病気を克服した親友の快気祝いで出かけた。

おいしい酒が飲めるのも命あってこそ。

食事の前に箸を選んだ。

秋もたけなわ、私も友も細身の赤い箸にした。

コース料理が始まった。

白木のカウンター席に、次々と出てくる

料理の数々。

どれもこれも歓声をあげたくなった。

器も凝っている。

大将の黒木さんは天才的なセンスで料理の陣頭指揮をとっていた。

お寿司もあれば、

あん肝もあり。

大きなカゴからは

くろぎの秋が現れた。

炊き立ての白ご飯には牛ステーキを、

栗ご飯に

鮭いくら丼も加わって、それぞれの秋を満喫した。

別腹のデザートはくろぎ自慢のかき氷で締める。

最後に、親友の生還を祝って、ハッピーバースデーを歌った。

一流とは、厳しい道の上にある。

親友も神の手といわれる名医のおかげで脳腫瘍の手術を無事終え、生きていた。

また一緒に食事ができて、泣きたくなるほど嬉しかった。

お土産にお店からいただいたケーキとご飯で、くろぎの余韻を感じながら、

親友の生還を噛みしめた秋の夜だった。

くろぎ

東京都港区芝公園1-7-10

電話：03-6452-9039

営業：朝の部（土）9:30～11:00/昼の部（火〜土）12:00～14:30/夜の部（月〜土）17:00～23:00

休み：日曜日、ゴールデンウィーク、夏季休暇、年末年始

交通：都営浅草線・大江戸線「大門」駅A6出口から徒歩5分

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